ToMonteItaliaの食旅

イタリア在住のトモンテが、食を中心に、スローライフを紹介するよ

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【父の想い出】記憶に残っている、あの日々

毎月27日は、父の月命日。

幼少時代、父親っ子だった自分は、何十年たった今でも、子供達を溺愛していた父のことを、ふとした瞬間に思い出します。

この記事では、月命日にちなみ、父との想い出について綴ります。

幼少期

自転車の後方座席に私、前のチャイルドシートに小さな妹を乗せ、自転車で行ける様々な公園めぐりをしてくれました。

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娘達を自転車に乗せ公園に行く父

父はいつも、公園内のベンチでワンカップ大関を1杯飲みながら、娘達が遊んでいるのをニコニコ微笑みながら眺めていました。

小学生時代

「晩御飯の時お父さんが家にいたら、プロ野球ばかり見るから好きな番組が見れない!」と、多くの友達が愚痴をこぼす中、超子煩悩だった父は、阪神の試合観戦を我慢して、娘達にテレビのアニメ番組を見放題にさせてくれました。

毎年夏、高校野球を見ながら、バスタオルが必要な程感涙する父でした。
父と一緒に浪商高校へ、ドカベン香川選手と牛島投手の練習風景よく見に行ったものです。

田舎出身だった父は、近くの川で、釣り道具一切なしの、小さなマス取りを教えてくれました。靴を脱いで川に入り、マスを手で隅っこに追いやって網ですくうのです。

ある日友達と遊ぶ約束をしていたら、母から「今日はお父さん、お姉ちゃんとマス取りに行くの楽しみにしてたよ」と言われ、父との先約をすっかり忘れていたことに気付きました。慌てて友達に電話して事情を説明し、約束日を変更してもらいました。
それ以降父は、小学生の友達付き合いと宿題の両立で忙しい私に遠慮して、マス取りをはじめ、お出掛けの約束を一切しなくなりました。

中学時代

テストで100点を取ったら、ご褒美として、当時ファンだったバンドのライブに連れて行ってくれると父が約束してくれ、努力の末念願が叶い、コンサート会場の厚生年金ホールに同行してくれました。
ライブ中、ボーカルの結婚発表があり悲しくてシクシク泣いてしまい、隣に着席していた父は随分複雑な気持だったでしょう。

両親が切願していた進学校受験に合格し、「職場の同僚に自慢してやった」と、父はとても喜んでいました。

高校時代

中学時代、学年で2番の優等生だった私も、高校では学年で下から4番目へと落ちこぼれになり、成績はガタ落ち、家庭にまでピリピリとした緊張感と険悪な空気をもたらしました。

優しかった父は、殺伐とした娘の扱い方に戸惑い、腫れものを触るかのように距離を置いていた気がします。

大学受験失敗と浪人

家に車がなかったので、父は受験する大学へ電車に乗って同行してくれました。

予想通り受験校は全て落ち、社会で働くには女性も4年制大学卒の方が有利だという母の強い希望から、4年制大学合格を目指し浪人することに。

「女の子は無理して勉強せんでも、短大でいいんちゃうんかなぁ」と、父が小さな声で初めて意見しました。
何も吸収できない空っぽの脳を酷使して勉強に疲れた娘を、教育ママから救おうとしてくれていたのがわかりました。

大学時代

一浪してなんとか4年制私立大学に合格し、家庭に明るい雰囲気が戻りました。

当時は携帯電話がなかったので、お化粧をし始め大学デビューした娘に、男子学生から家の固定電話にかかってくる電話を、父は隣の部屋でテレビを見ているふりをしながらダンボの耳で聞いていたと、母が言っていました。

会社員時代

就職しお給料がもらえる身分になり、父の誕生日に自転車をプレゼントしました。
自宅から最寄の駅までは自転車で約20分の距離で、父はかなり年季の入った古い自転車を使っていたので最新型モデルを選んだのですが、「ああ、ありがとう」と、薄めの反応でした。
気に入らなかったのかなぁ?とガックリしていたら、「お父さん、お風呂場で号泣してたよ」と、母が教えてくれました。

ウェスタン映画好きだった父は、グランドキャニオンを1度でいいから見てみたい、と言っていました。

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グランドキャニオン

そこで父の夢を叶えようと、旅行会社のパンフレットを取り寄せ、親子2人旅の計画をし始めました。
しかし、糖尿病で歩行が不安定な父には海外旅行は無理だと母が反対、父も娘に迷惑をかけまいと遠慮し、自分の英会話力のレベルの低さで父が危険な目にあったらどうしようと不安になり、結局計画倒れに終わりました。
何故強行しなかったのかと、今でも悔やまれます。

最後に

この記事では、月命日にちなみ、父との想い出について綴りました。

果たして父の人生は幸せだったのかどうかを考えつつ、ブログを書きながら泣いている自分は、もはや変態ですね。

小津安二郎監督の映画「東京物語」で主人公が、「孝行したい時に親はなし」と号泣するシーンがあります。まさに同感です。

今日も父のために般若心経を唱えたいと思います。
tomonteitalia.hatenablog.com
長文備忘録に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

*本記事は、はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」への投稿文です。