消化を助ける山の薬草酒ジェンツィアーナ
イタリアには様々な食後酒があります。
レモンで作るリモンチェッロ、ぶどうの搾りかすを発酵させたアルコールを蒸留して作るグラッパ、サルデーニャのギンバイカの実や葉から作るミルト、薬草、香草、樹皮などの植物を配合して作るアマーロが特に有名です。
通常食後酒は飲まないのですが、レストランで勧められた場合、敢えて選ぶなら消化を助ける「ジェンツィアーナ」にします。何故なら他の食後酒と比べ、実際に消化が楽になるからです。
苦味があるので初めは苦手だったのですが、歳を重ねるにつれ、その薬っぽい味に慣れてきました。
ジェンツィアーナ(Genziana)とは
学名Gentiana Lutea L.(ジェンティアーナ・ルテアL)というリンドウ科の多年草で、イタリアでは主にGenziana maggiore(ジェンツィアーナ・マッジョーレ)と呼ばれ、和名はゲンチアナです。
イタリアでは、この根で作った食後酒も「ジェンツィアーナ」と名付けられています。
標高1500m~2500mの山に生息し、大きなもので1メートル以上に成長し夏に黄色い花が咲きます。
朝鮮人参に似た根、根茎には、その苦味に苦味健胃作用があり、日本薬局方には生薬ゲンチアナと記されています。
消化を促進する食後用ハーブティーにもゲンチアナは使われています。ハーブティーのパッケージにある太文字DOPO PASTO(食後の意味)の下には、「ジェンツィアーナ-アニス-ミント 消化を促進します」と記載されています。
その効果の恩恵を受けるのは、人間だけではありません。
北イタリア山岳地方ヴァルテッリーナの山小屋でジェンツィアーナを注文したところ、「ジェンツィアーナの食後酒??この辺りでは、胃腸の調子が悪い牛に食べさせるものだけど」と言われ、体調不良の家畜に食べさせる薬草として使われていることを知りました。
リキュール等への利用
アブルッツォ州では、ゲンチアナの根を乾燥させ、同州の辛口白ワイン「トレッビアーノ」を加えて食後酒が作られています。
製造法は異なりますが、マルケ州やトレンティーノ地方にもゲンチアナの根で作るリキュールや蒸留酒があります。
フランスには、この根を使った薬草系リキュール「スーズ」という食前酒があり、ピカソが愛したことで有名です。
オリジナルレシピ
アブルッツォ州出身の知人からゲンチアナの根をスライスして天日乾燥したものを頂き、食後酒「ジェンツィアーナ」の作り方も教えてもらいました。なので、自宅で初めて作ってみました。
【材料】
スライスして天日乾燥したジェンツィアーナの根 約70g
辛口白ワイン750mlx2本(フルーティーな香りがなく、若くてすっきりした辛口白ワイン。アブルッツォ州のトレッビアーノがお勧め)
醸造アルコール 375ml
砂糖 190g
(以下お好みで)
クローブ
シナモンスティック
レモンの皮
【作り方】
1. 材料を大瓶に入れ、砂糖が溶けるまで混ぜます。蓋をして最短でも40日以上保存します。
2. 綺麗な琥珀色になったら、ジェンツィアーナを濾します。画像は2ヶ月経過したものです。
3. 出来上がり!
色、香り、味、全てにおいて、最高の出来ばえで大満足!
ジェンツィアーナをメニューに載せてないレストランが多く、口頭で有無の確認をして注文するケースがほとんどだったので、その希少価値から後味が苦くても美味しく感じるのかも?! というのが本音です。
中央アペニン山脈の山小屋やトラットリアで食後酒を勧められた際は、「ジェンツィアーナあります?」と聞いてみて下さい。運が良ければ自家製が出てくるかもしれません。