ToMonteItaliaの食旅

イタリア在住のトモンテが、食を中心に、スローライフを紹介するよ

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「モモ」をYouTube視聴して感じたこと

芸人YouTuberの中で登録者数トップを誇るオリエンタルラジオ中田敦彦が、自身のYouTube大学で、書籍「モモ」を昨日と今日2回に分けて紹介した。前半、後半編共に1動画あたり45~46分と長い動画だが、話の上手さと作品自体の魅力であっという間に見終わった。

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「モモ」は、映画ネバーエンディングストーリー(第1作目)の原作者として有名なドイツ人作家ミヒャエル・エンデによる1973年に刊行された児童文学作品である。

主人公は円形劇場に1人で住んでいる浮浪少女モモ。灰色の男達が「時間貯蓄銀行に時間を預けると利子がつく」という口車で人々の時間を盗み、人々は友情、家族愛を忘れてまで仕事の効率化を最優先し始め、次第にイライラしていく。その盗まれた皆の時間をモモが取り戻す、といったストーリーだ。

児童文学というよりも現代の大人向け小説のような、時間の大切さを改めて感じさせてくれる作品である。また、前に進もうと急ぐと後進し、気をつけながら後ろにゆっくり進むと前進する「さかさま小路」など、今の生活にあてはめてふと考えさせられるシーン設定等も興味深い。

モモ 時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえして [ ミヒャエル・エンデ ]


感想(39件)


ストーリーを聴きながら、何故か時々心にひっかかるシーンがあるので調べてみると、ミヒャエル・エンデの父エドガー・エンデはシュールレアリスト画家だった。しばし納得。アトリエを暗くして浮き上がるイメージをスケッチする「暗闇の画家」で、その作風は「ロマンティック・シュールレアリズム」と形容されている。モモに出てくる灰色の男達のような人間も、彼の絵画に見られた。父は愛人の為に家族を捨てたらしいが、ミヒャエル・エンデの作品は、父に少なからずとも影響を受けているのではないか?と感じた。

ミヒャエル・エンデは、1964年から1985年までイタリアに住んでいた。これも、作品の舞台となった円形劇場など、彼の作品に何かしら影響を与えていることがわかる。ちなみに彼は、ローマ郊外のGenzano(ジェンツァーノ)という田舎町に住んでいたようだ。

ドイツ/イタリア合作の映画「Momo」も、1986年に放映されている。
主人公モモを演じるドイツ人女優Radost Bokelは、映画「フラッシュダンス」の主役ジェニファー・ビールスの少女版のようなジプシー的風貌の女の子で、ベッポはLeopoldo Trieste、ジジはBruno Storiといずれもイタリア人俳優だ。ミヒャエル・エンデも列車の男としてカメオ出演している。
モモが住んでいる円形劇場はかなり小ぶりだ。それもそのはず、ローマのチネチッタ・スタジオで撮影されたからである。余談だが、フェデリコ・フェリーニは、ローマで撮影可能な場所でも敢えてこのスタジオ内にセットを設置して撮影するのを好む傾向にあったようだ。

有名プロデューサーVittorio Checchi Goriの元に、Enzo D'Alòが監督を務めるアニメーション映画「時間を征服するモモ」も、2001年イタリア/ドイツ合作で製作された。
また、2003年に24話からなる同アニメもドイツでテレビ放映された。アニメーション作家Enzo D'Alòはイタリア人なのに、イタリアでは非放映だったらしい。

書籍「モモ」は日本ではドイツに次ぐ発行部数で、学校の教科書にも作品の一部が掲載されている。しかし、イタリアでは日本ほど知られていない。これは、時間に対する観念が日本人と異なる国民性だからかもしれない。
そして、時間貯蓄銀行に時間を預けるのを20年前にやめた私はイタリアに住み始め、これからもここにいるだろう。多分。