ToMonteItaliaの食旅

イタリア在住のトモンテが、食を中心に、スローライフを紹介するよ

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スペイン・ポルトガル 鍋料理の旅

毎年11月になると、遠い昔、スペインとポルトガルで食べた鍋料理を想い出す。

バルセロナのレストランで、カタルーニャ地方のブイヤベース Zarzuelaサルスエラを、赤茶色をした土鍋 Cazuela(カスエラ)で食べた。
サルスエラは、スペインの軽歌劇オペレッタのように、豪華な魚介類が多種類入っているスープで、名前のごとく具もスープの味もリッチだった。

スペイン料理は、国民性や文化と共通して主張が激しく濃厚だ。
イタリア産と比べ、オリーブオイルもワインも生ハムも、スペイン産のものはずっしり重く味が濃い。
だから、スペイン旅行も終わりに近づくと、レストランではなくバルに寄って、2~3種類のタパスで軽く済ますことが多くなる。

アンダルシア地方のバルでは、熱々のカスエラに入った海老のピルピル Gambas Pil Pilガンバス・ピルピル)というタパスを食べた。
熱したオリーブオイルの音がピルピルと音を出すことから、こう名付けられたらしい。
未だにアヒージョとの違いが不明確であるが、この海老風味の唐辛子ガーリックオイルにパンを浸して食べて、スペイン人気分も味わった。

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海老のピルピル

アンダルシア地方からバスでポルトガルに入った。
リスボンのレストランで、タコの雑炊 Arroz de Polvo (アローシュ・ジ・ポルヴォ)を食べた。ポルトガルには、タコ飯とタコ雑炊の2種類あるらしいが、私が食べたのは雑炊タイプだった。タコは柔らかく、素朴で懐かしい味がした。

【レシピ紹介】

ポルトガル風☆タコ雑炊 by Amelie Y 【クックパッド】 簡単おいしいみんなのレシピが342万品


ポルトガル料理は日本人の味覚に馴染みやすく胃に優しい。食べ終わって心までほっとした。
スペイン料理が大好きで、フラメンコやサルバドール・ダリ等、濃厚なスペインカルチャーを愛する私だが、胃だけはついていけない。

ナザレでは、焼き魚の懐かしい匂いにつられ、海岸沿いの食堂で安いイワシの網焼きをレモンで頂いた。醤油抜きの日本の焼き魚とほぼ同じ味で新鮮だった。

翌日、ポートワインで知られるポルトへ向かった。
哀愁漂うポルトガル民俗歌謡ファドはリスボンで有名だが、個人的には港町ポルトの方が似合うと思う。

ポルトでは、牛肉と豚肉の塊、もも鶏肉、ソーセージ、じゃがいも、玉ねぎ、人参が丸ごと入った豪快な鍋煮込み料理、Cozido à portuguesa (コジード・ア・ポルトゲーザ)を食堂で味わった。当時ポトフを食べたことがなかった私は、見た目の無骨さに一瞬後悔したが、肉と野菜をフォークで突き刺すとトロトロで感動した。
また、スープは透明に近く、肉と野菜から出る旨みと塩味だけのシンプルな味だったが、体の芯まで温まる、ザ・お袋の味だった。

同行した東京出身の友人は、東洋人を構いたがる超陽気なスペイン人にうんざりしていたらしく、「ここは食事も美味しいし、やっとホッとできた。スペイン抜きでポルトガルだけにすれば良かった!」とまで言いきった。
関西人の私はスペイン人のノリについてそれ程気にならないが、親切でありながら一定の距離を保つポルトガル人は、日本人に違和感を感じさせない居心地の良さを与えてくれる。

織田信長の時代に南蛮貿易によって、ポルトガルからパンや天ぷらやカステラやコンペイトウなどが日本に伝わったのに、ポルトガル旅行をする日本人は少ない。
コロナが終息し将来スペイン旅行を計画される際は、もし時間が許すなら、是非ともポルトガルへ足を伸ばされることをおすすめしたい。
ポルトガル観光局のまわし者でも何でもない、スペインを愛して止まないイタリア在住者が言うのだから間違いない。


*はてなブログ今週のお題「鍋」への投稿文です。