ToMonteItaliaの食旅

イタリア在住のトモンテが、食を中心に、スローライフを紹介するよ

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ローマ教皇フランシスコ就任式から8年を振り返って

チャオ!トモンテです。
2013年3月13日、コンクラーヴェでホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿がローマ教皇として選出され、3月19日にその就任式が行われ、フランシスコ教皇が誕生しました。

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ローマ教皇フランシスコ

2021年1月、フランシスコ教皇はコロナワクチンを接種され、この3月、ローマ教皇として初めてイラクを訪問されました。

この記事では、ローマ在住の筆者(クリスチャンではありません)が過去を振り返り、フランシスコ教皇について日頃感じることやその素顔を、ショートエピソードにしてみました。

ローマ教皇の印象

筆者がローマに住み始めた頃、ローマ教皇はヨハネ・パウロ2世で、2005年の教皇の死後、側近であったベネディクト16世が選任されました。
ベネディクト16世は就任されてから約8年後、聖職者による児童への性的虐待とバチカン銀行のマネーロンダリング(資金洗浄)を含む不明瞭な資金運用というバチカンの闇問題で疲弊され、高齢による健康上の理由で引退。
その後、現在のフランシスコ教皇が選任されました。

3教皇の印象について:
●ヨハネ・パウロ2世(ポーランド人)
「私はあなた方の‥‥いや、私たちのイタリア語で、自分の思いをよく理解して頂けるかわかりませんが、もし間違っていたら、どうか直して下さい」と、笑顔で信者達に演説された気さくなお人柄。
若い頃はスキーなどを楽しまれ、スポーティーでアクティブ。アブルッツォ州や北イタリアで筆者が訪れた山にある教会に写真が飾られていて、山の教会をよく訪問されていたことがうかがえる。
元テロリストのトルコ人からサンピエトロ広場で銃撃事件に遭遇するが、刑務所に服役中の受刑者に面会した心の広さを持ち、パーキンソン病を患いながらローマ教皇の任務を全うされた責任感に満ちた人物。

●ベネディクト16世(ドイツ人)
厳格、博識、慎重、保守的な印象。
家の近所の教会にいらした際、ボディーガードの数が半端ではなかった。教会周辺のビルの屋上や教会から離れた駐車場にまでライフル銃を持った私服警官が大勢はっていた。非常に用心深いお人柄がうかがえた。

●フランシスコ(イタリア移民系アルゼンチン人)
コミュニケーション力に長け、ユーモアを交えた話は周囲を魅了する。贅沢を嫌い質素を好む。
聖職者による児童への性的虐待とバチカン銀行のマネーロンダリングにメスを入れた勇気ある行動派。
ヨハネ・パウロ2世も若者から人気があったが、それを上回る人気スターのようなカリスマ的存在で、カレンダーやポスターなど、様々なフランシスコグッズが販売された。

イタリアでは、確定申告書に選択式の寄付欄があり、非営利団体のボランティア活動費、医療研究費、大学研究費、世界遺産維持費などの他に、過去にはカトリック教会への寄付や仏教団体への寄付なども含まれており、フランシスコの就任後、カトリック教会への寄付が増大したようです。
これは、バチカンのダークイメージを払拭したフランシスコの功績とも言えるでしょう。

洗足式での接吻

就任後まもなく、ローマの少年院で洗足式を行い、フランシスコ教皇が受刑者12名(うち女性2名、イスラム教徒1名)の足を洗い、その足に接吻する姿がテレビの映像で流れ、衝撃を受けました。

質実剛健でぶれない聖職者

フランシスコ教皇は、バチカン御用達の赤い靴ではなく、いつもの黒い質素な靴で就任式を迎えました。純金の指輪ではなく銀の金メッキの指輪をはめ、車も大衆車、住居もバチカン宮殿の居室ではなく、聖職者のための宿泊施設サンマルタ館の201号室で、他の宿泊者と共に暮らしています。
フランシスコ教皇は、「私は貧しい人々による貧しい人々のための教会を望む」を有言実行し、贅沢を嫌い質素な生活を送っています。
清貧と平和の使徒であった、中世イタリアの聖人アッシジのフランチェスコを由来としてご本人が命名したフランシスコの名の通り、初志貫徹でぶれない生活習慣を、8年たった現在も継続されています。

卓越したコミュニケーション力

朝の演説の最後に微笑みながら「Buon pranzo! (良い昼食を!)」と、ほぼ必ずおっしゃいます。この気さくさで、ご就任後すぐ、皆の心をわしづかみにしました。

日めくり まいにち、教皇フランシスコ ([実用品])


ユーモアを交えて皆を和ませるフランシスコ教皇の話は人をひきつけ、流暢なイタリア語で、誰にでもわかる易しい言葉を選んでお話されます。従来ラテン語で行われるミサも、大抵はイタリア語でされます。
それは、有名ジャーナリスト故Enzo Biagi氏が執筆した記事を思い出させます。まだイタリアに来てまもない時に、内容が濃いのにわかり易い彼の記事を雑誌で発見し、有名ジャーナリストも易しいイタリア語で書くことで外国人でもわかるようにしているんだ、と感じました。
また、キンコン西野も自身の音声メディアVoicyで、コミュニケーションに最も大切なこととして、相手が理解できない2つ以上の言葉を使ってはいけないと言っています。

以前のローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世、ベネディクト16世は、英語で演説されることもあったのですが、フランシスコ教皇が英語でお話されるのを聞いたことがありません。
「私は貧しい人々による貧しい人々のための教会を望む」とメディア会見でフランシスコ教皇が語ったことを逆手に取り、「だからフランシスコは英語を話さず、イタリア語一点張りなんだ」と、イタリア経済を小ばかにした英国人のコラムを目にしたことがあります。

イレギュラーな聖年「いつくしみの特別聖年」

1400年以降、およそ25年に1回の頻度で聖年が開催されていたのですが、2015年12月8日~2016年11月20日に「いつくしみの特別聖年」が異例で実施され、2025年に開かれるはずだったサン・ピエトロ大聖堂の右端の扉が、前倒しの2015年に開かれました。これは、フランシスコ教皇の力のなす技としか思えません。

女性信者の手をひっぱたく事件

2019年12月、サン・ピエトロ広場で謁見中のアジア系女性信者がフランシスコ教皇の手をつかんでひっぱり、教皇はもう一方の手で女性信者の手をひっぱたきました。
2020年1月にサン・ピエトロ大聖堂へフランシスコ教皇の謁見に行った際、その失礼な行為について深く詫びておられました。
この事件について周りのイタリア人は寛容で、「誰でもカッとすることがあるし、人間味がある。」と肯定的な人が多かったです。
四方が覆われた防御ガラス付きの移動車に乗らず、信者との直接の交流を大切にされているので、命の危険を自分で回避するとっさの防御反応だったのではないかと思います。

海外渡航

平和活動の為、ご高齢にもかかわらず過去稀に見ぬ頻度で海外渡航をされています。
その際、移動中の機内でメディア記者会見を行うなど、ハードスケジュールを効率的にこなされています。
ラテンアメリカ、アジアの他に、イスラエルやイラク等異教徒諸国にも足を運び、2019年には来日もされました。

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マラドーナの訪問

同郷かつサッカー好きということもあり、マラドーナの訪問を心から喜ばれていたようでした。トランプ大統領との会見時に一瞬たりとも隙を見せなかった表情とは対照的でした。
マラドーナについての過去の記事は、こちらからどうぞ♪♪
tomonteitalia.hatenablog.com

健康状態

フランシスコ教皇は、長年にわたり坐骨神経痛に悩まれており、片足を引きずって歩かれています。ベネディクト16世同様、高齢で任務が充分に果たせない身体になったら退任するおつもりのようです。

さいごに

この記事では、ローマ在住の筆者が、フランシスコ教皇について日頃感じることを思いつくままに抜粋しました。

2020年4月12日の復活祭では、ロックダウンの渦中、フランシスコ教皇はリモートで演説を行いました。
今年の復活祭、2021年4月4日にはコロナは終息していると思っていたものの、ローマのコロナ感染状況は昨年春より悪化しており、現在レッドゾーン指定でロックダウン中です。
復活祭に親戚一同が集まって会食するのが、イタリアの伝統的習慣です。しかしながら昨年同様、祝日なのに、大勢の親戚と楽しく賑やかに会食することは今年も出来ません。

筆者はクリスチャンではありませんが、復活祭にはフランシスコ教皇と共に、コロナが早く終息するよう祈りを捧げるつもりです。

*本記事は、はてなブログ今週のお題「祝日なのに……」への投稿文です。